情緒的「味」

皮革製品は販売された時点から使用するに従って、「味」がでてまいります。

手の脂、衣服とのまさつなど、人それぞれの使用環境によって微妙に変貌をとげ、「育てる」という表現が

使われる所以であると思います。

この「味」というものが微妙でその使用者と他のものでは受け取り方に違いがあるように思います。

ある方が、「この皮革はねぇ、使うほどに味が増し、良い艶になるよ、ほら。これ、5年使ったやつ。」

とにこやかに笑うその方の手に持った財布を見ると・・・・

「き、汚い!、バッチィ!」

この財布を見た瞬間の印象でした。

しかし、そうとはいえず、「へぇ〜、良いですね〜、良い感じですね〜」とその場は答えましたが、

自分の手で持ってみようとは思いませんでした。

確かに、元はヌメの色であったであろう、皮革の色は飴色に艶やかに変化し、オーナーの使用環境か形状も滑らかに

湾曲しております。

年季が入った、という表現で表わすことができるのかもしれません。

しかし、よく手に触れていたであろう部分などは黒々として、不潔感たっぷりでした。

元の色がヌメ色でしたので汚れなどは他の色よりも目立ってしまったのかもしれません。

これが黒い色の皮革であればもっと違った印象であったと思います。

また、別の皮革であればさらに汚らしく、みすぼらしくなっていたのかもしれません。

社長の言う皮革であるからこそ、5年酷使したであろうあの財布もあの程度の「汚さ」で済んだのかもしれません。

ただ、思ったのはこの方には、「汚い」という感覚はないのだろうと思いました。

自分で育てた皮革の色、艶にはそれまでの私が知ることはできないプロセスがあり、それを知っているからこそ、

であると思います。永年使った相棒のように苦楽をともにした皮革です。

物を越えた、かわいさがあると思います。これを「情緒的味」と名づけたいと思いました。

そういった情緒的な情報が私にはありませんので、私の目の前の財布はモノでしかありません。

もう2年ほど前であれば、モノとして丁度良い感じであったかもしれません。

これも育てかた、使い方によりますので何ともいえない部分ですが、モノには他人の目、モノ独自の「味」と、

オーナーの目、情緒的な「味」には大きな隔たりがあるということです。

と、私の黒々とした銀さびだらけのシガレットケースも・・・・・・・・・・・。皆さんがご覧になれば

やはり、「汚い!」

2004/07/14
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